コンプレックスを克服するために

人に注目されたいという気持ちとは

  • 人は誰もが「欲」を持っています。それはさまざまな欲望です。まずは人間としての生理的な欲望があります。食欲、睡眠欲、性欲。そしてそれらを満たすために必要な「モノ」を欲するのです。

    現代社会においては、あらゆることが「対価」を支払えば完結してしまうということがあります。人間の「欲望」は「ニーズ」というスマートな言葉に置き換わって、ビジネスのネタとして扱われるのです。資本主義のなかにあっては私たちの「欲望」もまた、経済を回転させるひとつのファクターなのです。

    私たちのさまざまな欲望、さまざまな価値観は、巨大な貨幣経済のなかにことごとく飲み込まれているものなのです。それらの「欲」をうまくコントロールすることが「自制」ではあるものの、やはりどこかで自分の望む通りに振る舞いたい、自分の思う通りに事を運びたいという意識が私たちの中にはあります。生理的な欲望に加えて私たちがそれぞれ抱えた趣味嗜好が発生させる物欲もまた、自分自身が金銭を稼ぐことに対するモチベーションであったり、「いつかは」という希望を抱かせるものであったりするものなのです。

    それら、人間としての、動物としての「欲」とは別の次元の欲望として「物欲」や「出世」などの人間社会の中に根ざした欲望があるものですが、その中で「注目されたい」という欲望があります。それは人との関わりの中で生きている私たちが、人よりひとつ抜きん出た存在としてひとつ「上」に上昇したいと考えることです。仕事で何か目立つ成果を上げること、能力として人よりも抜きん出たものを持つこと、その他の方法で人に注目されたいという欲求がある人がいます。

    そこからは人によって違うもので、食欲などと違って生理的なものではありません。人として生きていく中で築いてきた「個性」がなせることであるとも言えるでしょう。「個性」とは、自分が自分であるということを名実共に実現できる唯一の拠り所なのです。自分が自分でいること、自分が自分でいて、他の誰とも違う存在でいられることは、人にとってはとても価値のあることで、それが精神的な支柱になり得ることでもあるのです。

    人に注目されたいというのは一種の願望です。生理的な欲とは違い、身体的に直接作用のあるようなことではありません。そこにあるのは精神的な「カタルシス」です。人に注目されることでカタルシスを得ることができるというのです。

    カタルシスとは自分の願望が達せられた際の精神的な快感のようなものです。充足感といってもいいでしょう。それらの充足感がまた自分の行動の糧になったりするものなのですが、人によって「どこで、なにでカタルシスを得られるのか」ということは異なります。ですから、社会は多様性を維持していて、さまざまな人がいる理由にもなっています。

    コンプレックスを抱いていても、「人に注目されたい」と考えるような人はいるでしょう。ただ、実際と願望に差があるだけで、それを埋めるための方法はいくらでもあるはずです。